▼オペラ/音楽劇研究所2017年度1月研究例会(第168回オペラ研究会)  終了

2018年1月20日研究例会 (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所
2018年1月20日研究例会 (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

 

 

※以下、報告掲載までの間、暫定的に告知記事を掲載します。

 

◇日時:2018年1月20日(土) 17:00-18:30

◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館809会議室  

 

 ◇内容:研究発表

 ◇発表者:新田孝行

 ◇題目:「現代オペラ演出における文化的参照の問題

     ――クリストフ・ロイ演出《影のない女》(2011年、ザルツブルク音楽祭)と

     その批評的受容をめぐって」

 

◇発表要旨

 古典的なオペラ作品の再解釈として主に行われる現代のオペラ演出において、台本上の設定を読み換える際のネタ元になるのが文化的参照(cultural references)である。演劇や映画の場合と異なり、それ自体の芸術性がいまだに認知されていないオペラ演出に関しては、批評家の間でも一般の観客の間でも、原作をどう演出したかという芸術的な側面より、何に読み換えたかという知的な側面に対する関心が高い。セノグラフィーや演技指導の質ではなく、コンセプトや文化的参照の適切さが演出を評価する基準となっている。この現状に対して、演出家はどのような挑戦が可能だろうか。

 本発表では、2011年のザルツブルク音楽祭で上演されたクリストフ・ロイ演出《影のない女》を例に、文化的参照をめぐる演出家の戦略について考える。台本上の物語を音楽学的知見を踏まえながら当該作品の受容史として読み換える、近年の疑似学問的なオペラ演出の傾向に属するロイの《影のない女》は、時代や場所、人物を特定する文化的参照への理解度に応じて観客を異なる体験に導く。その方法を、演出家の発言や公演評と照らし合わせつつ演出の細部に注目することで具体的に明らかにしたい。

 

◇発表者プロフィール

 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所招聘研究員。専門:比較文学(音楽と演劇・映像の比較研究)。主な研究業績(オペラに関する著作):『キーワードで読む オペラ/音楽劇研究ハンドブック』(共著、アルテスパブリッシング、2017年)、「音楽家=映画作家としてのジャン・グレミヨン――《曳き船》とオペラ、その分身」(『美学』第62巻2号、2011年)、「ポストモダンのオルフェウス――ステファン・ヘアハイムのオペラ演出について」(『美学』第67巻1号、2016年)、「現代オペラ演出、あるいはニュー・ミュジコロジーの劇場――ローレンス・クレイマーの音楽解釈学再考」(『音楽学』第62巻2号、2016年)

 

▼オペラ/音楽劇研究所2017年度12月研究例会(第167回オペラ研究会) 終了

◇日時:2017年12月9日(土) 13:00 ~ 18:00

◇会場:早稲田大学早稲田キャンパス26号館1102会議室

◇内容: シンポジウム

◇企画:早稲田大学オペラ/音楽劇研究所「バロック・オペラ」ワーキンググループ

 後援:早稲田大学総合研究機構

 

*  *  *

 

◇題目:<モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム>

          モンテヴェルディのオペラから広がるバロック・オペラの世界

◇概要:

 オペラ/音楽劇というジャンルの黎明期においてその発展に寄与したクラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)の生誕450年を記念し、モンテヴェルディ最晩年の作品《ポッペーアの戴冠》(初演1642-43)の題材に着目したシンポジウムを開催する。古代ローマ皇帝ネロ(ネローネ〔伊〕)とその2番目の妻ポッパーイア(ポッペーア)という、実在した人物を初めて取り上げた世俗オペラである本作以降、古代ローマ帝国にまつわる歴史的題材がヨーロッパ各地のオペラにおいてどのように扱われているか、演奏による解釈も交えつつ、パネリストがそれぞれの視点で考察し、モンテヴェルディから始まるレパートリー展開の再考を目指す。 

 

 

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 写真:長澤直子

開会挨拶:荻野静男  趣旨説明:萩原里香

【第1部】イタリア

司会:宮川直己

▽大崎さやの:《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロ について

  ~歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家~

▽辻昌宏:カヴァッリの《エリオガバロ》は何故上演中止になったのか?

▽萩原里香:古代ローマ皇帝を題材としたオペラ ~イタリア・オペラを対象として~

 

以下、演奏協力:黒田大介(T)、末吉朋子(S)、中谷路子(pf)

演奏曲目:

《ポッペーアの戴冠》第3幕より ネロとポッペーアの二重唱 “Pur ti miro”

《離宮のオットーネ》第2幕より オットーネのアリア “Compatisco il tuo fiero tormento”

【第2部】ドイツ、ロシア

司会:大野はな恵

▽荻野静男:ラインハルト・カイザーのオペラ ~ローマ皇帝ものを中心に~

▽大河内文恵:18世紀半ば頃までのドイツ諸都市における古代ローマ史劇によるオペラの状況

  ~C.H.グラウン《ブリタニコ》を例に~

▽森本頼子:エリザヴェータ女帝時代(1741~62年)のロシア宮廷におけるオペラ・セリア上演

  ~古代ローマ史劇を題材とした作品を中心に~

 

演奏曲目:

《オクタヴィア》第1幕より ピソのアリア “Porto il seno”

《ブリタニコ》第2幕より アグリッピーナのアリア “Mi paventi il figlio indegno”

【第3部】全体討論

司会:岩佐愛

▽中村良:“ローマ物”への抵抗:17-18世紀フランスにおける音楽劇作品の題材

▽吉江秀和:J.C.バッハの《カラッタコ Carattaco》(1767年ロンドン・キングズ劇場初演)

  ~ロンドンで上演された古代ローマ帝国にまつわるオペラ~

 

演奏曲目:

《カラッタコ》第3幕より トリノバンタのアリア “Non è ver, che assise in trono”

閉会挨拶:大河内文恵

20171209モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム.pdf
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2017年12月9日研究例会 (c) Naoko Nagasawa
2017年12月9日研究例会 (c) Naoko Nagasawa

▼オペラ/音楽劇研究所2017年度11月研究例会(第166回オペラ研究会) 終了

2017年11月11日研究例会  (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所
2017年11月11日研究例会 (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

 

※以下、報告掲載までの間、暫定的に告知記事を掲載します。

 

◇日時:2017年11月11日(土)16:30-18:00 

◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 3号館809教室    

◇内容:研究発表

 発表者:神竹喜重子 

 題目:「古儀式派商人による音楽メセナとロシア音楽の『自己覚醒』

     ――私立マーモントフ歌劇場を中心に」

◇発表要旨

 これまで、ロシアの古儀式派については、17世紀半ばの宗教改革後における生活様式や極東ロシアにおける活動拠点などについて、歴史学や宗教学の観点から様々に論じられてきた。しかし、その中では、古儀式派が19世紀末から20世紀初期にかけて、メセナを通じてロシアの音楽文化の発展に大きく寄与したことは注目されてこなかった。こうした音楽文化史的観点によるアプローチの欠如は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのロシア音楽史の文脈のなかで、古儀式派商人が経営していた同時期の私立歌劇場が確固たる位置を与えられてこなかったことの一つの要因となっている。

 本報告では、このような状況に鑑みて、同時期のロシアにおける特に私立マーモントフ歌劇場の上演活動を取り上げ、この劇場が、世紀狭間のロシア音楽史の進展において果たした役割を明らかにする。具体的には、20世紀初期にロシアの音楽メディア上で掲載されたロシア内外の各歌劇場の上演記録を比較分析し、私立マーモントフ歌劇場が、これらの歌劇場のなかでいかなる上演活動の傾向を示しているのか、またいかなる特徴で際立っているのかを論じる。

 

◇発表者プロフィール

  北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター・ 非常勤研究員及び一橋大学経済研究所ロシア研究センター・ 研究機関研究員、一橋大学大学院言語社会研究科・博士研究員。博士(学術)。専門は19世紀末から20世紀初期のロシア音楽史。論文に「マリエッタ・シャギニャンのセルゲイ・ラフマニノフ論 : 一九一二年の「S・V・ラフマニロフ : 音楽心理的スケッチ」」、CD「ラフマニノフを聴きたくて~心から心へ ラフマニノフ珠玉の作品集~」(Musicaindo)の選曲、解説など。

 

▼オペラ/音楽劇研究所 2017年度10月研究例会(第165回オペラ研究会) 終了

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◇日時:2017年10月7日(土)16:30-18:00

◇会場:早稲田大学早稲田キャンパス

    26号館(大隈記念タワー)1102会議室

    

◇内容:ギュンター・ヘーグ教授 講演

 

「ベルカント・オペラにおける悲哀と夢の作業 ―ヴィンチェンツォ・ベッリーニのオペラ《ノルマ》・《夢遊病の女》・《清教徒》のシュトゥットガルト演出における過去の反復と現代の超越」

 

◇共催 慶應義塾大学文学部独文学専攻

 

◇発表要旨

 ドイツ・シュトゥットガルト市の州立歌劇場ではこの15年間ほどに、演出家のヨッシ・ヴィーラーとセルジオ・モラビトの二人が舞台美術及び衣装を担当するアンナ・フィーブロックとの共同作業により、「ベルカント・オペラ」を代表する存在と目されているヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)が作曲した《ノルマ》《夢遊病の女》《清教徒たち》を相次いで新演出してきた。ベッリーニを現代流の音楽演劇をすでに実現していた作曲家として再発見ないし新発見したと批評される彼らの功績はしかしながら、台本と筋展開と楽曲との関係を再構成した点にとりわけ認められる。筋展開に即して浮き彫りになる歴史との三重の関係性は、筋書きが展開する歴史的文脈であり、旧体制復活とイタリア統一運動に挟まれた時期に相当する作品成立背景であり、現代に生きる私たちの時代へと通ずる歴史的連続性である。この時空間の中で歌唱する登場人物たちは過去と現在との間、あるいは悲哀と夢との間に生きる歴史の刻印を帯びることになる。ベッリーニによって実践された歴史化はブレヒトによる「異化」と相通ずるものである。シュトゥットガルトの舞台上では、観客の眼前に歴史絵巻でなく近過去がアレゴリーとして呈示されることによって、現代もまた儚くも過ぎ去りゆくものに過ぎないという感覚を観客に喚起する。舞台上の時空間は同時にまた、合い間の過渡期に相当するものであり、あたかも通過旅客用待合室に生きるかのような現代の人間存在を想起させるものでもある。ベッリーニによって反復される過去とは、フロイトが名づけるところの「悲哀の仕事」を通じて未来を志向するものへと変貌する。さらに、三つのオペラに共通するモティーフでもある分身性を強調したヴィーラーとモラビトという二人の演出家による「夢の仕事」を通じて、現代の境界を超越した未来の共同体がシュトゥットガルトの舞台上に構想されているのである。

 

[出席者数]21名

 

◇講演者プロフィール:ドイツ・ライプツィヒ大学演劇学科教授

◇主要著書 

『トランスカルチャー演劇―反復のシーンと超越のジェスチャー』ベルリン, 2015年

『演劇学のスナップショット―ライプチヒ大学講義集』G.バウムバッハ他編, ベルリン, 2014年

『演劇の記述―ハイナー・ミュラーの文字の演劇』共編, ベルリン, 2009年

『自然の形姿の幻影―18世紀演劇における身体・言語・図像』フランクフルト・アム・マイン, 2000年

2017年10月7日研究例会 (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所
2017年10月7日研究例会 (c) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

▼オペラ/音楽劇研究所 2017年度7月研究例会(第164回オペラ研究会) 終了

◇日時:2017年7月29日(土)16:30 〜 18:00

◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 26号館(大隈記念タワー)1102会議室

 

◇内容:研究発表

 発表者:吉江秀和

 題目:「18世紀末ロンドンにおけるヘンデルのイタリア・オペラ作品受容について」

 

◇発表要旨

 1759年に没したヘンデルの作品は、没後もオラトリオ作品を中心にロンドンの劇場や一部の演奏会で演奏され、出版も抜粋を主に再版を含めて継続された。そして、1784年のヘンデル記念祭が大成功を収めた後、1776年の創設以来、ヘンデル作品をプログラムの軸とした演奏会の古楽コンサートの予約者数は増加し、1787年にはアーノルドによるヘンデル作品全集の刊行が開始されるなど、ヘンデル熱が1780年代中頃に高まった。

 そのような中、1786年の四旬節のオラトリオ・シリーズにて、ヘンデル記念祭で演奏された作品を中心にアーノルドが編纂した寄せ集めのパスティッチョ・オラトリオ《レデンプション》が上演され人気を博した。翌年にはオペラ《ジューリオ・チェーザレ》がキングズ劇場で上演されたが、このオペラはヘンデルの初演時とは大きく異なり、ヘンデルの他のオペラ作品のアリアなどに新たに歌詞を当てはめたパスティッチョ・オペラである。この時期の演奏会などにおけるイタリア・オペラ作品演奏では、アリアや重唱が抜粋されて取り上げられるかたちが一般的であった。

 そこで本発表では、1780年代以降の古楽コンサートを中心にこの時期に取り上げられたイタリア・オペラ作品の傾向について論じた。古楽コンサートでは、ヘンデル記念祭などで歌われた特定のアリアがとりわけ1790年代に毎年のように演奏される傾向が見られることや、オペラ作品から抜粋され新たな英語歌詞が付された《レデンプション》のアリアが歌われる頻度の高まる点に、当時のロンドンにおける演奏会の全体的な傾向として挙げられる英語声楽作品の増加と同様の特徴が見られることを指摘した。更に、1780年代以降のヘンデルのオペラ作品の楽譜出版状況においても人気を博した特定のアリアや英語歌詞版のアリアの出版が数多く見られ、演奏会の演目と出版譜が連動するかたちでオペラ作品のレパートリーの固定化が進んだと考えられる点にも言及した。

 

◇質疑応答

 題目に使われた「18世紀末」が表す時期の定義について、パスティッチョ・オラトリオの《レデンプション》でイタリア語のアリアに新たな英語の歌詞が付けられた際の内容や元のイタリア語の歌詞との違いについて、人気を博して頻繁に歌われ続けたアリアと当時の人気歌手との関連の有無などについての質問が続き、それらに答えながら18世紀末ロンドンの音楽受容の様相に関する補足説明をおこない、議論を交わしていった。

 

[出席者数]18名

 

◇ 発表者プロフィール

杏林大学、玉川大学、武蔵大学ほか非常勤講師

専門:18世紀イギリスにおける音楽受容

主要論文:「一八世紀末ロンドンにおけるモーツァルト受容 ― 招聘計画推進期を中心に ― 」(網野公一ほか編『モーツァルト スタディーズ』玉川大学出版部、2006年)、「18世紀末の古楽アカデミー ― サミュエル・アーノルドの指揮者就任の背景に関する一考察 ― 」(『音楽学』第58巻2号、2012年)、「1780年から1800年にかけての古楽コンサートのプログラムに見られるヘンデル作品の変化に関する一考察」(『杏林大学研究報告 教養部門』第33巻、2016年)

2017年7月29日研究例会  (C) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所
2017年7月29日研究例会 (C) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

▼オペラ/音楽劇研究所2017年度6月研究例会(第163回オペラ研究会) 終了

◇日時:2017年6月17日(土)17:00-18:30

◇会場:早稲田大学 早稲田キャンパス 26号館(大隈記念タワー)1102会議室

 

◇内容:研究発表

 発表者:岩佐 愛

 題目:「ヘンデル・オペラの「イギリス性」~18世紀ロンドン劇場史の文脈から~」

 

◇発表要旨

 18 世紀前半のロンドンで長期にわたりイタリア・オペラ上演に携わったヘンデルの作品は上演時期から幾つかのグループに分けられる。発表では、王立音楽アカデミー設立以前にヘイマーケット劇場で上演された最初の作品《リナルド》、「第二次」アカデミー解散後にコヴェント・ガーデン劇場で上演された円熟期の作品《アリオダンテ》、同じ劇場主(ジョン・リッチ)の所有するリンカーンズ・イン・フィールズ劇場で初演された最後の作品《デイダミーア》をとりあげ、各作品の内包する「イギリス性」が考察された。まず、《リナルド》はイギリスの伝統音楽劇であるパーセル風セミ・オペラや劇場マスクから影響を受けたとされる。だが現在では疑問視されるスペクタクルの再現性、主題・演出に当時の戦況が影響を与えた可能性についても考慮の必要がある。次に《アリオダンテ》にはリッチの資源(合唱団・舞踊団)を活用した台本・演出の改変が見られる。確かに主題はアリオストの原作に沿うものだが、イギリス国内(エディンバラ)を舞台とする唯一のヘンデル・オペラとして、当時のロンドンで流行した「スコットランド風」(バラッド)オペラやリッチのパントマイム演出(音楽とスペクタクル性の重視)との関連も考慮する必要がある。また、《デイダミーア》の「非英雄オペラ」的性格は、1730 年代に興隆した「英語オペラ」に見られる古典的主題や英雄の風刺的扱い(バーレスク化)が独自台本や配役に反映された可能性がある。イタリア・オペラ(特に英雄オペラ)の基本形式を維持しつつ、 ロンドンでの上演環境(他の音楽劇演目や舞台設備)から取り入れられたと考えられる「イギリス的要素」は作品(及び上演時期)ごとに異なる。つまり、ヘンデル・オペラの「イギリス性」は何らかの共通性や一貫性を持つ形では立ち現れず、あくまで 18世紀ロンドン劇場史の文脈を反映した「適応」の一環として捉える必要がある。

 

◇質疑応答

 現代のミュージカルに(ヘンデル時代の)オペラが与えた影響、18 世紀後半に(ノヴェールらにより)フランスで発達することとなる「バレエ(パントマイム)」とマリ・サレやイギリスの「パントマイム」との間の影響関係、宮廷オペラ(劇場)を中心とする大陸(ヨーロッパ)の諸都市と複数の商業劇場でのオペラ上演を可能としたロンドンとの比較、ヘンデルの音楽ビジネスの手法(楽譜出版及び海賊版問題)等について議論が交わされた。

 

[参加者]17名

 

◇発表者プロフィール

武蔵大学人文学部准教授

専門:イギリス18世紀研究(美術史、諸芸術論、庭園美学)

関連著作:「ヘンデルの<エイシスとガラテア>初期上演史再考―上演形式の変遷とその政治的背景(1718-1733年)」(『日本18世紀学会年報』第20号、2005年);「捨子養育院における芸術と慈善 ― ヘンデルの<メサイア>慈善演奏会の背景」(『武蔵大学人文学会雑誌』第41巻、第3・4合併号 、2010年);「《アキレス》から《デイダミーア》へ:ヘンデルの「バーレスク」オペラ?」(日本ヘンデル協会公演プログラム、2017年) 

2017年6月17日研究例会 (C) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所
2017年6月17日研究例会 (C) 早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

▼オペラ/音楽劇研究所2017年度5月研究例会(第162回オペラ研究会) 終了

◇日時:2017年5月20日(土)17:00 〜18:30

◇会場:早稲田大学早稲田キャンパス 3号館809教室

◇内容:講演会

 講演者:市瀬陽子

 題目:「古典舞踏とオペラ~舞踏会のダンスをめぐって」

 

◇発表要旨

 オペラ作品におけるダンスは、いかに聴衆にアピールするか。実体験を通してそれを感じ、共有し、オペラの新しい楽しみを知ってほしい。それが本発表の主眼である。取り上げた場面はモーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》第一幕の舞踏会、終幕で踊られる三つの舞曲-メヌエット、コントルダンス、ドイツ舞曲-が、ダンス実習のお題である。

 冒頭に、オペラにおけるダンスの役割を的確に捉えて効果的を挙げた上演であり、今回のテーマに結びつく例として、演出家 D.マクヴィガー、振付家 A.ジョージへのインタビューを紹介した(ヘンデル作曲《ジュリオ・チェーザレ》、グラインドボーン音楽祭、2005 年)。

 続いて三つのダンスそれぞれの歴史を概観し、振付資料について述べた。フランス宮廷の気品高いメヌエット、イギリスに起源を持つ社交的で楽しいコントルダンス、くだけた調子のドイツ舞曲はレントラーやワルツとの関連も指摘される。聴衆が理解した社会的な意味合いはもちろんのこと、それは多様な客層をそのまま反映した選曲ともいえる。

 メインとなるダンス実習は、積極的な参加を得て三つのダンスを全て踊ってみることができた。重なり合って演奏される三つの舞曲を、耳で聴き分けることは困難だろう。しかしダンスが解れば一目瞭然、客席の誰もが各々反応できたはずだ。そして舞踏会の場面は「観る」だけでなく、いわば「参加する」機会となり、聴衆に高揚感を与え、客席と舞台を繋ぐ重要な役割を果たす。オペラ研究会のフロアもまさに熱気に満ちて、その楽しさは十分に共有されたように思う。このような参加型の発表を好意的に受け止めて下さったオペラ研究会の先生方、参加者の皆様に、心より感謝を申し上げたい。

 

◇質疑応答

 ダンス実習に熱が入って質疑の時間をやや圧迫してしまったにも拘わらず、様々な角度から示唆に富んだ発言が数多く寄せられた。ダンスの振付や歴史に関わる質問、オペラを上演する現場あるいは人材育成における問題点、現代的な解釈を採用したバロック・オペラの演出・振付に対する見解など、オペラ上演の本質に関わる質問や意見が出され、研究と上演とを結ぶ、非常に活気ある意見交換の場となった。

 

[参加者]19名

 

◇講演者プロフィール

 舞踊史研究者、ダンサー、振付・演出家。聖徳大学音楽学部准教授、東京芸術大学講師。舞台作品“優雅な宴 les fêtes galantes”(1992/93)にてA.カンプラのバレエ作品を復活上演、バロック・ダンスを中心に出演作多数。近著に『バレエとダンスの歴史』(平凡社、鈴木晶編著、2012年)、DVD『時空の旅~バロックダンス・ファンタジー』解説(2010年レコード芸術特選版)。


2017年5月20日研究例会 (c)早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

 

▼オペラ/音楽劇研究所2017年度4月研究例会(第161回オペラ研究会) 終了 

◇日時:2017年4月15日(土)17:00 〜18:30

◇会場:早稲田大学早稲田キャンパス 26 号館1102 会議室

◇内容:研究発表

 発表者:青木義英

 題目:『日露友好の懸け橋としてオペラがもたらす効果

    ――オペラ《光太夫》を題材として――』

 

◇発表要旨

 本発表ではオペラがもたらすソフトパワーの威力についてオペラを題材に検証してみた。外交上ハードパワーを行使することが許されない日本にとって切り札となるのはソフトパワーに頼ることである。特に外交上重要な時期である日露関係において、両国の懸け橋となる題材がオペラに隠されていることはあまり知られていない。オペラ《光太夫》について解説する。アゼルバイジャン出身ファルハンク・フセイノフ(1948-2010)作曲によるオペラ《光太夫》は江戸時代の蘭学者、桂川甫周(1826-1881)文献「北瑳聞略」に記録された当時の日本とロシア交流の壮大な記録にインスピレーションを受けた声楽家青木英子(1919-2010)により日本初の全編ロシア語で制作されたオペラである。主人公大黒屋光太夫が漂流苦難の末女帝エカテリーナ二世の勅許で帰国する物語は日露友好の懸け橋ともいえる内容となっている。これまで日本人を題材としたオペラで二国間の友情を題材をとしたものはなく、まさにこのオペラは日露両国のソフトパワー源泉の一つでもある交流を題材としたものである。我が国では 2006 年観光立国推進基本法が成立、その前文では観光は国民生活の安定を象徴するものであり、国際相互理解を増進するものと記されている。観光立国の目的は経済効果ばかりではなく文化・芸術によるソフトパワーの発揮であり、このオペラはその素材として新たな観光資源の構築にもつながり、ロシア人へのおもてなしのメッセージでもある。また 2018 年に日本政府が「ロシアにおける日本年」と題しロシア各地で、文化等のイベントを検討する中、発表者はこのオペラも検討課題として提案する予定である。

 

◇質疑応答

 上演が日本国内のみにとどまった経緯について質問があった。もともとは現地上演を視野に創

作されたがソ連崩壊に伴う混乱の影響で実現しなかった。しかし、オペラが大衆的人気ジャン

ルのロシアで、全編がロシア語で書かれ日本文化の諸相が随所に織り込まれている本作品を上

演することは日露間の相互理解と関係強化に直結する。現地初演が切望される。

 

[参加者]15名

 

◇発表者プロフィール

 1948年生まれ。1972年日本航空入社、労務部、総務部、客室企画部、マドリード支店等勤務

後、鈴鹿国際大学(現鈴鹿大学)人間科学部教授、和歌山大学観光学部特任教授を経て2015年より同大客員教授(現在)。オペラ「光太夫」制作者青木英子を助け構成・脚本の一部を担当した。 


2017年4月15日研究例会 (c)早稲田大学オペラ/音楽劇研究所

 

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